ミルクホール

時の法令 第6号(昭和25年) 12月23日号 24ページ「ミルクホール」
奥野信太郎(慶応義塾大学教授)

学生時代、「ミルクホール」に通って官報を読んでいたという、短いコラムに目が引かれました。

『ミルクホールは、文字通りミルクホールであって、なにはともあれ牛乳を飲ませるのがたてまへであった……もう一つミルクホールにくる御客にとって大事なことがあった。それはここにはいろいろな新聞と官報とが置いてあったから、朝のひと時、午後のひと時、口腹にいささかの満足をあたへながら、家でとっていない新聞や官報を貪り読む場所でもあったのである。…官報というものは新聞のように毎日普通の人は読んでいない。しかしミルクホールでそこにある新聞という新聞を読みつくしてしまうと、あとはつい官報でもぱらぱらと読んでみたくなる』

ミルクホール、本当にミルクを飲ませる店だという事実に少し面白くなります。

つまり今でいうと喫茶店で朝活に新聞を読むような感覚でしょうか。昔は喫茶店にも官報があったとは驚きです。新聞すら読まなくなっている人が増えている現代です。むしろ、電車の待ち時間にちょっとしたニュースを拾い読み、というのが忙しい現代人の習慣になっている風潮があります。
新聞を読み尽くしてしまうと次は官報、だなんて、今では信じられない身近さです。また、そんなに読み尽くせるほど朝の時間的余裕があるというのも、驚くべきことです。

スマートフォン一つで情報蒐集してしまえる時代な一方、喫茶しながら本を読める本屋は広がっています。
たまには、図書館や喫茶店に足を運んで、じっくり現代社会を読みあさるのもいいかもしれない。そんなことに考えが及ぶコラムでした。
(Y)