法制意見~「不当解雇で提訴はできぬ」

見出しに驚くこの記事も、創刊号(昭和25年(1950年)11月3日号)に掲載されています。

「法制意見」の欄は、「法務総裁が、法律問題に関する政府の最高顧問として、内閣を初め、内閣総理大臣や各省大臣に対し、意見を述べ、勧告をし、また、法務総裁の補助機関が、政府の各機関や、地方公共団体のその他公の機関から、あらゆる法令の解釈上の疑問その他法律問題について照会を受けた場合に、意見を述べた事項を照会し、これを解説して、一般の参考に資することとするものである。」と紹介されています(法務総裁については、“マッカーサー元帥の「警察力の増強」に関する書簡と海上保安庁の強化”を参照)。

長い間、時の法令の根幹をなしていた欄といえます。

創刊号のこの記事が、記念すべき「法制意見」第1回で、22~24ページに掲載されています。その意見要旨(昭和25年8月9日法務府法制意見第一局による回答の要旨)は、次のとおりです(慶谷淑夫・法務府事務官執筆)。

 

「地方公共団体の長によつて不当に解雇された職員が、その解雇の取消又は変更をもとめるためには、特別の事由のない限り、労働委員会に対する審査の申立を経ないで直接裁判所に訴を提起することはできない。」

 

つまり、「民間企業の不当解雇で提訴ができない」のではなくて、自治体の職員が解雇取消し・変更を求めた際の手続に関する「法務府の意見」を解説したものでした。

結論を簡単にいえば、地方公共団体の長の行った不当解雇は行政庁の違法な処分なのだから、訴えを起こしたい場合は行政事件訴訟特例法に基づいて、まずは労働委員会に「訴願等」を行わなければならず、この手続を経たあとであれば裁判所に訴えを提起できると判断される、ということでした。

行政事件の「特殊性」から、まずは処分を再審査する権限をもつ行政庁に直接訴願等をさせることによって行政庁に「反省」の機会を与え、できる限り「内部で問題を解決」し、行政上の救済をしようという趣旨の意見であるという解説を、若干興味深く感じました。

現在も、公務員は免職されてもすぐには裁判所に訴えることはできません。まずは国家公務員は人事院に、地方公務員は人事委員会・公平委員会に「不服申立て」の手続をする必要があります。これは、公務員の地位は「労働契約」によるのではなく「任命行為」によるものであるという特殊性を反映しているようです。
(C.S)